Tze Leung Lai他著・松原望・山村吉信訳 
『ファイナンスのための統計学』《東京図書)

  ー統計的アプローチによる評価と意思決定ー


 総合案内サイトへどうぞ(関連サイト多数!)


現 東京大学名誉教授
履歴
聖学院大学大学院政治政策学研究科教授
上智大学外国語学部国際関係副専攻教授
東京大学大学院新領域創成科学研究科教授
東京大学大学院総合文化研究科兼経済学研究科教授
東京大学教養学部教授
(以下略)
専攻:確率論・統計学、意思決定、相関社会科学
メールアドレス

基礎さえあればもう安心(2016.6.23)



各章への案内



1章 線形回帰モデル
最初から分布や検定,推定で始めるのではさすがに遠すぎる(おびただしい数の本がある)から,中継ぎとして,よく使われる回帰分析でスタートを切るのは受け入れられる.変数選択や回帰診断のような進んだ発展があり,同時に初級統計学や計量経済学の復習にもなる.

2章 多変量解析と尤度推定
ファイナンスのデータはとにかく変量の数が多い.これを手際よく有効に減らさなければおよそ推論判断や意思決定に適さない.主成分分析(PCA),因子分析,確率モデルの最尤推定が有力な助けとなる.これらも常套手段である.

3章 基本的投資モデルとその統計分析
本番テーマである.マルコヴィッツのポートフォリオ選択から入り,資産価格決定(CAPM),裁定価格理論(APT)と順当に進む.意外に統計学は平均,分散,相関係数程度だけでよい.重要指標が入り,主成分分析で市場理解を深め,ブートストラップ手法を学んで基礎はできた.

4章 最尤法とベイズ推定
最尤法は原理としては済んでいるが,実際にはむしろ適用上の課題こそ大切である.回帰の非線形回帰への発展に適用されるとき切れ味がいい.データを出発点とする意味では同輩格のベイズ統計学が入って来るのも本章である.事前分布,事後分布というタームの使い方がポイントである.

5章 時系列解析
ファイナンスのデータはほぼ全て「時間」「並び」であり,時系列分析の考え方を地道に学ぶ.定常性の諸関数から入り,AR, MA, ARMA,ARIMA, SARIMAでさしあたり十分である.数理的には見かけは機械的だが,だからと言って現象は機械ではなく,意外と分析し尽くせるものではない.あくまで現象が主で分析法は従と心得ておこう.

6章 資産利回りのダイナミック・モデルとそのボラティリティ
当然ではあるが,実際の利回りデータは殊のほか多様複雑であり,単純かつ固定されたモデルでは不十分である.構造パラメータことにボラティリティは今一つの主役であり,独自の観察とダイナミック・モデルを要求する.ただ,さすがにそれなりの複雑さは避けられない.

7章 ノンパラメトリック回帰と実体実証的モデル化
たとえばBlack-Scholesの公式は経済学に基づきよくできた具体的実体的なモデルであとはパラメータ推定で行くが,自然科学とは異なり,だからといって(だからこそ)現象にあてはまるかは別問題である.あるいは記述するモデルがない場合も多い.その折は統計的実証(多くはノンパラメトリック)の出番である.

8章 オプション価格とマーケットデータ
今や分野外でも普通名詞になったBlack-Scholesの公式の威力も実は本質的なところで万能ではない.たとえば,アメリカ型には明示的な公式はなく,ボラテリティも直接は計測されない.そこにはマーケットデータからさまざまな理論が立てられる余地がある.

9章 フィナンシャル計量経済学における多変量解析と時系列分析の進んだ方法
ファイナンス計量経済学の進展として,いわゆる「見かけ上の回帰」の事態から「単位根」と「共和分」は課題としては順当で,推定にランク落ち回帰さらには正準相関を必要とするが,そのフォローは相当数学的になる.「レジーム・スイッチ」「変化点」も知られたトピックだが,利回りへの適用はさすがに込み入る.実際の必要に応じて読みたい.

10章 金利市場
金利市場は実務上もファイナンス数理の重要な見せ場であり,Hull,White, Black のモデルをはじめとして,無裁定前提や平均回帰性などデリバティブ理論と現実の結びつきが主導の動機になっている.なお,キャリブレートしていないモデルは実装できないことは知っておこう.なお,「金利市場」は直訳で,実際は「債券市場」といわれる.

11章 統計的トレーディング戦略
理屈では無裁定の理論は利益を生じない.だが理論は実際に合致せず,そこにヘッジャー,裁定者,投資家の統計的トレーディング戦略が成立する余地がある.順張り,逆張り,裁定ペア戦略など著名な戦略の評価にふれ(データ・スヌーピングなど),リアルタイム・トレーディングにおける高頻度データのモデル化と分析を試みる.今後の発展分野.

12章 リスク・マネジメントの統計的方法
投資家だけでなく金融機関も稀少現象のリスクから保護されることが,今日リスク・マネジメントの重要課題である.市場リスクのVaR,ESはそれである.「バーゼル合意」の「内部モデル」と,要求されるバックテスト,ストレス・テストを簡潔に紹介し,併せて極値理論に触れる.本章の内容は今後,実務でも大きく展開する見通しで,独立に刊行される.



目次


翻訳者によるまえがき

原著者によるまえがき

第I部 基礎的な統計的方法とファイナンスへの応用

第1章 線形回帰モデル
 §1.1 通常最小二乗法(Ordinary least squares OLS)
  1.1.1 残差と残差平方和
  1.1.2 射影行列の性質
  1.1.3 非負定値行列の性質
  1.1.4 OLS の統計的性質
 §1.2 統計的推論
  1.2.1 信頼区間
  1.2.2 ANOVA(分散分析)検定†
 §1.3 変数選択
  1.3.1 検定ベースおよび他の変数選択基準
  1.3.2 ステップワイズ変数選択
 §1.4 回帰診断†
  1.4.1 残差の分析
  1.4.2 影響診断
 §1.5 確率的回帰変数への拡張
  1.5.1 最小分散線形予測量
  1.5.2 先物市場と先物契約によるヘッジ
  1.5.3 確率的† 回帰変数における推論
 §1.6 回帰におけるブートストラップ
  1.6.1 プラグ・イン原理とブートストラップ再サンプリング
  1.6.2 回帰モデルのブートストラッピング
  1.6.3 ブートストラップ信頼区間
 §1.7 一般化最小二乗法
 §1.8 実装と実際例

第2章 多変量解析と尤度推定
 §2.1 確率変数の同時分布
  2.1.1 変数変換
  2.1.2 平均ベクトルおよび分散共分散行列
 §2.2 主成分分析(PCA)
  2.2.1 基礎的定義
  2.2.2 主成分の性質
  2.2.3 米財務省証券対LIBORスワップ・レートのPCA実例
 §2.3 多変量正規分布†
  2.3.1 定義と密度関数
  2.3.2 周辺および条件付分布
  2.3.3 直交性†と独立性および回帰への応用
  2.3.4 サンプル分散共分散行列とウィッシャート分布
 §2.4 尤度推論†
  2.4.1 最尤法
  2.4.2 漸近的推論
  2.4.3 パラメトリック・ブートストラップ法

第3章 基本的投資モデルとその統計分析
 §3.1 資産利回り
  3.1.1 定義
  3.1.2 資産価格と利回りの統計的モデル
 §3.2 マルコヴィッツのポートフォリオ†理論
  3.2.1 ポートフォリオの重率
  3.2.2 効率集合の幾何学
  3.2.3 効率的ポートフォリオの計算
  3.2.4 m, Sの推定およびその実例
 §3.3 資本資産価格付けモデル(CAPM)
  3.3.1 モデル
  3.3.2 投資への意義
  3.3.3 推定と検定
  3.3.4 CAPMの実証研究
 §3.4 多因子価格付けモデル
  3.4.1 裁定価格理論
  3.4.2 因子分析†
  3.4.3 PCA アプローチ†
  3.4.4 Fama, Frenchの3因子モデル†
 §3.5 ポートフォリオ管理への再サンプリング†の応用
  3.5.1 Michaud†の再サンプル効率的境界
  3.5.2 ブートストラップのパフォーマンス

第4章 最尤法とベイズ推定
 §4.1 最大尤度と一般化線形モデル†
  4.1.1 MLE計算の数値的方法
  4.1.2 一般化線形モデル†
 §4.2 非線形回帰モデル
  4.2.1 Gauss-Newtonのアルゴリズム†
  4.2.2 統計的推論†
  4.2.3 実装とその実例
 §4.3 ベイズ推論†
  4.3.1 事前および事後分布
  4.3.2 ベイズ方式†
  4.3.3 多変量正規分布の平均および分散共分散行列のベイズ推定量
  4.3.4 正規回帰モデルのベイズ推定量
  4.3.5 経験ベイズと縮減推定量†
 §4.4 縮減推定量とベイズ的方法の投資問題応用
  4.4.1 効率境界にプラグ・インするm とS の縮減推定量†
  4.4.2 もう一つのベイジアン・アプローチ†

第5章 時系列解析
 §5.1 定常時系列の分析
  5.1.1 弱い定常性
  5.1.2 独立性の検定
  5.1.3 Wold分解とMA, AR, ARMAモデル
  5.1.4 ARMAモデルでの予測
  5.1.5 パラメータ推定と次数の決定
 §5.2 非定常時系列の分析
  5.2.1 トレンド除去
  5.2.2 実証例
  5.2.3 データ変換と差分
  5.2.4 単位根†非定常性とARIMAモデル
 §5.3 線形状態空間モデルとカルマン・フィルタリング†
  5.3.1 Pt|t-1, x(^)t|t-1,およびx(^)t|tの再帰関係式
  5.3.2 ダイナミック線形モデルとCAPM における時変ベータ

第6章 資産利回りのダイナミック・モデルとそのボラティリティ
 §6.1 資産利回りの時系列の定型化された事実
 §6.2 時変ボラティリティの移動平均†推定量
 §6.3 条件付分散不均一モデル
  6.3.1 ARCHモデル
  6.3.2 GARCHモデル
  6.3.3 和分GARCHモデル
  6.3.4 指数的GARCHモデル
 §6.4 ARMA-GARCHおよびARMA-EGARCHモデル
  6.4.1 将来利回りおよびボラティリティの予測
  6.4.2 実装およびその例

第II部 計量ファイナンスにおける先進的話題

第7章 ノンパラメトリック回帰と実体実証的モデル化
 §7.1 回帰関数と最小分散予測
 §7.2 1次元予測変数の場合
  7.2.1 連動平均平滑子,連動直線平滑子および局所多項式回帰
  7.2.2 カーネル平滑子
  7.2.3 回帰スプライン†
  7.2.4 3次スプラインの平滑化
 §7.3 平滑化†パラメータの選択
  7.3.1 バイアス-分散のトレードオフ†
  7.3.2 クロス・バリデーション
 §7.4 多変量の予測変数
  7.4.1 テンソル積基底と多変量適応的回帰スプライン
  7.4.2 加法的回帰スプライン
  7.4.3 射影追跡回帰†
  7.4.4 ニューラル・ネットワーク
 §7.5 ドメイン知識とノンパラメトリック回帰の結合モデル†
  7.5.1 罰則付スプライン・モデルとフォワード・レートの推定†
  7.5.2 社債のフォワード・レートカーブの罰則付きセミパラメトリック・スプラインモデル

第8章 オプション価格とマーケットデータ
 §8.1 オプション価格と価格付け理論
  8.1.1 オプション・データとプット・コール・パリティ
  8.1.2 ヨーロッパ型オプションに対するBlack-Scholesの公式
  8.1.3 最適停止†とアメリカ型オプション
 §8.2 インプライド・ボラティリティ
 §8.3 Black-Scholesモデルと価格付け理論に対する別理論と修正
  8.3.1 インプライド・ボラティリティ関数(IVF)モデル
  8.3.2 分散の弾力性一定(CEV) モデル
  8.3.3 確率的ボラティリティ(SV) モデル
  8.3.4 ノンパラメトリック・モデル
  8.3.5 実体実証結合のアプローチ

第9章 フィナンシャル計量経済学における多変量解析と時系列分析の進んだ方法
 §9.1 正準相関分析
  9.1.1 交叉共分散および交叉相関行列
  9.1.2 正準相関†
 §9.2 多変量回帰分析†
  9.2.1 多変量回帰分析における最小二乗推定値
  9.2.2 ランク落ち回帰
 §9.3 修正コレスキー分解と高次元分散共分散行列†
 §9.4 多変量時系列
  9.4.1 定常性と交叉相関
  9.4.2 PCA†による次元縮約
  9.4.3 確率的回帰変数†を用いる線形回帰
  9.4.4 単位根の検定
  9.4.5 共和分VAR†
 §9.5 長期記憶モデルとレジーム・スイッチあるいは構造変化
  9.5.1 和分モデルにおける長期記憶
  9.5.2 変化点AR-GARCHモデル†
  9.5.3 レジーム・スイッチのモデル
 §9.6 確率的ボラティリティ及び多変量ボラティリティのモデル
  9.6.1 確率的ボラティリティ・モデル
  9.6.2 多変量ボラティリティモデル
 §9.7 一般化モーメント法†(GMM)
  9.7.1 線形関係に対する操作変数法†
  9.7.2 一般化モーメント制約とGMM推定†
  9.7.3 例:異なる短期金利モデルの比較

第10章 金利市場
 §10.1 金利市場の基本要素
  10.1.1 銀行口座(マネー・マーケット・アカウント)と短期金利
  10.1.2 ゼロクーポン債とスポット金利
  10.1.3 フォワード・レート
  10.1.4 スワップ・レートと金利スワップ
  10.1.5 キャップ,フロア,スワップション
 §10.2 イールド・カーブの推定
  10.2.1 スプライン基底関数によるノンパラメトリック回帰
  10.2.2 パラメトリック・モデル
 §10.3 債券および他の金利のイールドの時系列
 §10.4 確率的金利と短期金利モデル
  10.4.1 Vasicek, Cox-Ingersoll-Ross,およびHull-Whiteモデル
  10.4.2 債券オプション価格†
  10.4.3 Black-Karasinski モデル
  10.4.4 多因子アフィン・イールド・モデル
 §10.5 確率的フォワード・レート・ダイナミックスとLIBORおよびスワップ・レートデリバティブ
  10.5.1 フォワード価格のBlackモデルに基づく標準的市場公式
  10.5.2 無裁定価格付け:マルチンゲールとニュメレール
  10.5.3 LIBOR とスワップ・レートのモデル†
  10.5.4 瞬間フォワード・レートのHJM モデル
 §10.6 パラメータ推定とモデル選択
  10.6.1 金融機関における金利モデルのキャリブレーション†
  10.6.2 期間構造モデルに対する計量経済学アプローチ
  10.6.3 ボラティリティ・スマイルと実体実証アプローチ

第11章 統計的トレーディング戦略
 §11.1 テクニカル分析,トレーディング戦略,およびデータ・スヌーピング・チェック
  11.1.1 テクニカル分析
  11.1.2 順張り戦略と逆張り戦略
  11.1.3 ペア・トレーディング戦略
  11.1.4 トレーディング戦略の採算性の実証研究
  11.1.5 バリュー投資† と知識ベース・トレーディング戦略
 §11.2 高頻度データ†,市場マイクロ構造,そのトレーディング戦略
  11.2.1 制度的背景と取引データについての定型化された事実
  11.2.2 ビッド-アスク・バウンスと非同期トレーディング・モデル
  11.2.3 取引の時間間隔のモデル化
  11.2.4 原価格過程の推論
  11.2.5 リアルタイム・トレーディング・システム
 §11.3 取引費用とダイナミック・トレーディング
  11.3.1 取引費用の推定と分析
  11.3.2 一通りでないトレーディング目的と戦略
  11.3.3 多期間トレーディングとダイナミック戦略

第12章 リスクマネジメントの統計的方法
 §12.1 金融リスクと市場リスクの指標
  12.1.1 金融リスクのタイプ
  12.1.2 資本条件の内部モデル
  12.1.3 VaRと他の市場リスクの指標
 §12.2 VaRとESの統計的モデル
  12.2.1 正規分布の約束事とt分布修正
  12.2.2 PCAの応用と実例
  12.2.3 時系列モデル
  12.2.4 VaRモデルのバックテスト
 §12.3 非線形ポートフォリオのリスク計測
  12.3.1 テイラー展開を経て局所的評価へ
  12.3.2 モンテカルロを経て完全な評価へ
  12.3.3 多変量コピュラ関数
  12.3.4 分散低減技法
 §12.4 ストレス・テストと極値理論†
  12.4.1 ストレス・テスト
  12.4.2 異常損失と極値理論
  12.4.3 シナリオ分析とモンテカルロ・シミュレーション

付論
参考文献


翻訳者によるあとがき

索  引

関連ホームページ

 総合案内サイト      http://www.qmss.jp/portal/

 統計分析ゼミ(姉妹ゼミ) http://www.qmss.jp/appstat/
 基礎統計         http://www.qmss.jp/e-stat/
 データバンク演習     http://www.qmss.jp/databank/
 放送大学         http://www.qmss.jp/statair/
 確率論          http://www.qmss.jp/prob/
 
計量社会科学     http://www.qmss.jp/qmss/